ストリングの寿命は張ってから3ヶ月とか、四季の変化によって変えるべきだとかいわれています。確実に言えることは、「ガットが切れた時が寿命」と「打球感が合わなくなったとき」の二つだと考えて 良いのではないでしょうか。ここでは「打球感」について説明します。

テンションダウンによる打球感の劣化

打球の衝撃によってストリングは相当大きな引張応力を繰り返し受けることになります。繰り返し受ける応力によってストリングそのものは劣化して行きます。多くの樹脂は水分や紫外線によっても劣化して行きます。 張り上がってからの時間が経つにつれて保存環境によってもストリングスは劣化していきます。その劣化はテンションの緩みといったことで実感されるでしょう。

使用頻度や打球時のガットへのストレスの度合いそして経時変化によってテンションが下がってくるのはもちろんストリングそのものがもつバネ性能も変化して いきます。張り上がりの良い打球感から変化して打球感に多少の違和感を覚えるようになればその時点が張り替えのタイミングと考えても良いでしょう。 打球感が悪いということはそれがプレーへいくらかの影響を及ぼすことにもなります。打球感の変化を打ち消そうとするあまり無理にボールを打とうとして本来 のあるべきスイングフォームを崩してしまうかもしれません。 ガット張替え期間の3ヶ月を敢えて実行する必要は無いでしょう。もっと早いタイミングで張り替えた方が良い場合もまたその逆もありうるでしょう。

ストリング同士の摩擦によるもの

張りあがったばかりのストリングの表面は非常に滑らかで、ストリング同士が交差する部分での摩擦は小さいものです。ストリングの縦糸または横糸を指で容易にずらすことが出来ますし、指を離せばまた自然と元の位置に戻ることでしょう。 ボールインパクトの衝撃を繰り返し受けることでストリング表面は荒れてきてこれがストリングが交差する部分での摩擦を大きくしていきます。ボールインパクト時にはボールの勢いによって一本一本のガットは伸びようとしますが、 実際にはストリングは縦横に編まれているためにそれぞれのストリングの交差する部分での摩擦抵抗を受けることになります。赤矢印がボールインパクトによってストリングが伸びようとする力、 これに対して青矢印がストリング同士の摩擦で発生する抵抗力を示しています。

新品のガットも僅か数時間のプレーで縦糸と横糸の摩擦は大きくなりボールを打った後のガットのズレもそのままでは戻らなくなってきます。このことはボー ルインパクトでストリングが伸びようとする動きをこの摩擦が抵抗となってスムーズなガットの動きを妨げることになります。 はじめのうち良好と感じた打球感も、ものの数時間でずいぶんと異なったものに感じるかもしれません。ボールの食いつき良いセッティングであったとしてもそ の効果が発揮されるのは僅か数時間かもしれません。

ガットの寿命を延ばすアイテムとしてガット表面の潤滑剤がいくつかのメーカーから販売されています。これは主にシリコンを成分とするものであ り、ガット同士の摩擦を小さくするものです。新品同様とまでは無理としても、ストリングがずれるときそして戻に戻ろうとするときはある程度スムーズになる でしょう。ボールインパクト時のフィーリングもまた初期に近いものに回復することでしょう。

ガットメーカー各社からはある種のコーティングを施すことで打球感の耐久性を増しているものもあります。 最近流行のポリエステルガットにおいては表面が強固で荒れにくいためか、ガット同士の摩擦力が大きくならないようです。つまりガット同士の摩擦が増すことによる打球感の変化が少ないため、ある意味長く使えるストリングかもしれません。

プレー頻度やダブルスまたはシングルスの種目、スイングフォーム等によっても随分違ってはきますが、ストリングの本当に美味しい期間はほんの数時間なのかもしれませんね。

賞味期限は短く、消費期限は長いとも言えますね。