ボールを引きつけてから打てとはよく言われますが、引き付けすぎることでかえって振り遅れになるかもしれません。引き付けなくてもなんとなくタイ ミングでボールは打てるものだから、この「ボールを引き付ける」ということ忘れがちになってしまいます。しかし、ロジャーフェデラーをはじめトッププロの 写真を見る限りにおいては、ボールを打った瞬間、そして打った後にかけて、打点方向に顔が残っているのを数多く見ることができます。ボールを引きつけてか ら打った証でしょうか。では実際のところ「ボールを引き付けて打つ」ということには、どんなメリットがあるのか、今回は立体視のメカニズムから検証しま す。

ボールを引き付ければ、ボールの認識精度が上がる

下図において、ボールを見つめる状態として、遠方のボールを見ている時、それから打点近くまで十分引き付けて見ている状態をイラストに示しています。

Case:a 遠方にあるときは、ボールを認識するために(1)両眼の輻輳角、(2)ピント調節機能、(3)視覚上のボールの大きさから認識することになり、距離を正確に測ることにおいては若干精度が劣ります。

Case:b 一方引き付けて打った場合は、ボールは両眼に対する横方向に運動する物体の認識となり、背景との比較および、両眼がボールを追跡するときの筋肉の動きから認識することで、物体の位置をより正確に測ることができるのです。

日没も近づき少し暗くなり始めたころ、ボールへの当たりが悪くなったときにボールを引き付けて打つことを試してみてください。ボールが自分を横切っているのを見れるくらいであればなおよいでしょう。そうすればボールの当たりがまたよくなることでしょう。